荻原健司さん、海洋冒険家・白石康次郎さんが語る、スポーツを通して感じた温暖化と、いますべきこと
世界で目の当たりにしてきた地球温暖化
「夏はヨーロッパの氷河でトレーニングをするのですが、その氷河の面積が小さくなっていってるんです」と話し始めたのは荻原さんです。「宿泊している麓のホテルから、以前なら見えていた氷河が見えなくなった。これも地球温暖化の影響なのかな、と感じています」と語り、世界中で降雪量が減っているとも感じているそうです。
一方の白石さんは「世界中の海を旅してきましたが、日本の夏が、亜熱帯地域の気候に近くなっている気がしますね。雲の形などを見ていれば、それはわかるんです。赤道あたりと同じ雲が出ていますから」とコメントされました。
さらに荻原さんは、世界中で行われる競技会に出場することで、各国の環境問題に対する取り組みについて目の当たりにし、意識が変わったと言います。
「スキーにはワックスを塗ります。そのワックスが雪面に剥がれ落ちることによって、滑走性が増すんですね。でもそれは、ワックスが雪の上に落ちているということ。雪が溶ければ、地面に浸透してしまいます。だからヨーロッパのメーカーは、地球にやさしいワックスですよ、ということをパッケージにプリントしている。それを見れば、意識も変わりますよね。ヨーロッパで競技するようになって、そういった活動を目の当たりにすることで、環境についても考えるようになりました」
次の世代に、伝えたいこと
アスリートとして一流プレイヤーであるお二人は、現在、スクールや講演会などを通じ、子供たちと触れ合う機会も多いそうです。そんなとき、体験談を交えながら、環境についての話題に話が及ぶときがあります。
荻原さんは「なるべくわかりやすく話しています。例えば、温暖化が進めば、将来雪が降らなくなる。それはみんなの好きなスキーができなくなるということだよね、と。そのためには、どうすればいいか。僕自身が日ごろ気をつけていることなどを説明した上で、みんなもできることから実践すればいい。そうすればウインタースポーツを楽しみ続けられるんだ、というふうに話しています」とのこと。
「僕は多くのことを親や先生から教えてもらいました。それを次の世代に伝えたいと思っているんです」と言うのは白石さんです。
「僕が相手にしているのは"海"、つまり自然ですね。海にいると、我々はそこから生まれてきたのであり、それがベースにあるんだということを実感します。だから、君たちも自然から学ぶことが最も大事なんだと子供たちに話しています。自然界のルールを知ることで、より多くのことを学ぶことができると思います」では、子供たちに実感させるためには、どうすればよいか。荻原さんは、子供たちには大人が責任を持って、実践させることが大事なんだと説きます。
「子供たちは現場に行けばいいと思います。僕も両親が毎日のようにスキー場に連れて行ってくれ、スキーの楽しさを教えてくれた。結局、大人が何を、どうやって子供たちに伝えていくかということではないでしょうか。すると、それが子からまた次の世代に伝わっていく。そのためには大人が責任を持って、子供たちと一緒に行動しなくてはいけないですよね」
これから迎える冬……暖かく過ごす工夫は?
「チーム・マイナス6%」が提案する冬のビジネススタイル、ウォームビズ。荻原さんに、冬の暖かいスタイルを伺ってみました。
「暖かくするポイントは首ですね。首を保護していれば、寒さは防げると思います。僕にとっては、厚いコートより、マフラーを巻いたほうが効果的ですね」
首を暖めることがポイントと語る荻原さん。これには白石さんも、レスキューの経験から同意されました。
「海に落ちて低体温症になったとき、まず首を暖めるんです。首には太い血管がある。だから、ここを暖めると身体全体が温まるんです。健司さんがおっしゃる通り、首はポイントなんですよ」
そして荻原さんは、冬の過ごし方について、面白いエピソードを披露してくれました。
「選手時代、僕らのスタッフに外国人のサービススタッフがいたんですが、彼は冬でも窓を全開にして寝るんですよ。しかも裸で毛布にくるまっている(笑)。でも、暑苦しいより、寒いくらいのほうがよく眠れたりしますよね。頭もシャープになりますし」
スポーツを通してできること
今回の座談会には、荻原さん、白石さんが所属されるスポーツマネージメント会社スポーツビズの山本雅一代表も同席されました。
「スポーツを通じて価値を見出していくことが、僕らのテーマなんです」と山本さん。そのうえで地球温暖化防止についても、スポーツにできることがあると話されます。「我々は、スポーツをコミュニケーション手段とし、正しいことを伝えていくことがミッションだと思っています。例えば2人が、環境について話すことで、共感してもらえることはあるんですね。なぜなら、それは彼らが実際に体験してきたことだから。そんな彼らの発言を広めていかなくてはいけないと考えています」
そんな山本代表の思いは、お二人にとっても、同じもののようです。
「僕が海で感じた、自然の中で生かされているということを、子供たちを始め、多くの方々に実感してほしい。それを自覚すれば、自然の大切さがわかると思います」と白石さん。
そして荻原さんは「環境問題は一人ひとりの行動が大事。私自身もスーパーに行くときはマイバッグを持っていきます。そういった地道な活動を通じて、一人ひとりの理解と行動を広めていくことが大切なんじゃないでしょうか。そして僕はウインタースポーツをこれからも楽しんでいきたいし、子供たちにもやってほしい。そのためにも地球温暖化は止めたいのです」と語ります。
スキーと海という、自然を相手にするスポーツをすることの中から、身をもって自然の大切さ、環境を守ることの重要性を説くお二人。そのひと言、ひと言には、体感された方だけが持つリアリティと強さが伺えます。実践することの大切さ、そして、そこから学ぶことの尊さ。そんなメッセージが印象深い座談会となりました。
![]() | 92年アルベールビル、94年のリレハンメル両五輪団体での連続金メダル。ワールドカップ個人総合3連覇(93~95年)という偉業を成し遂げ、「キング・オブ・スキー」として海外からの支持も厚い荻原さん |
![]() | 現在は横浜市の教育改革委員も務める白石さん。海洋レース中にインターネットを使った冒険授業を小学生対象に行うなど、精力的に教育活動も行われています |
![]() | 当日は、お二人が所属するスポーツビズ代表の山本雅一さんも参加。「スポーツを通してできることを、メッセージとして発信していくのが我々のミッション」とのこと |
![]() | 白石プロデュースによるさいたま市桜木小学校で行った子どもアドベンチャーレースにて |
![]() | 荻原健司さん&次晴さんプロデュースの草津ノルディックスキーフェスティバル2005にて |
![]() | 「スポーツは、いろんな人を元気にし、励ましていると思う」と山本代表。スポーツビズには、お二人のほかにも、モーグルの上村愛子選手、日本人初のセリエAプレイヤー(バレー)の加藤陽一選手など、多くのトップアスリートが在籍しています |





