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対談:これからのクルマとの付き合い方

スペシャル対談 これからのクルマとの付き合い方

次世代自動車等導入促進事業アドバイザーも務める元F1ドライバーの片山右京さんが、自動車の環境・エネルギー問題に詳しい早稲田大学理工学部教授の大聖泰弘さんを迎え低炭素社会におけるクルマについて語り合います。

クルマは必要とされる社会条件によって進化する

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片山
 最近、高度道路交通システムのITSや交通事故の罰則強化など、現在と近未来のクルマ社会について興味をもっていますが、大聖先生はどうお考えですか。
大聖
 私は、クルマの将来を考えるときに、3つのことを考えています。
1番目は、今あるガソリン車やディーゼル車がどこまで進化し、クリーンになるかです。現在、各自動車メーカーが一生懸命に取り組んでいます。
2番目は、ハイブリッド車、電気自動車、水素燃料電池車、バイオ燃料を使う車など、どこまで高効率化やクリーン性能を向上させ、CO2を削減できるかです。今あるガソリン車やディーゼル車を超えるような、高効率でクリーンなクルマの開発も進められていますね。
そして3番目は、近未来に登場する環境性能に優れたクルマをどうやって上手く使うかです。1番目と2番目は、私が研究している領域です。3番目は、クルマの使い方ですが、クルマに乗らないという選択肢もあっていいと思います。公共交通機関を使うということです。
片山
 カーシェアリングという考えもありますよね。ところで、実現がもっとも難しいとされていた水素燃料電池車の市販車が、ついに登場しました。大聖さんはどのような感想をもっていますか。
大聖
 水素燃料電池車については、20年くらいのスパンで考えたいと思っています。価格面も含めて、まだ一般のユーザーに普及するレベルではありません。水素を供給するインフラや、水素を何から作るかという課題もあります。しかし、再生可能なエネルギーを使って水素を作り出すことができれば、水素燃料電池車は、非常に有効だと思います。
片山
 BMWの水素燃焼エンジン車を運転した時と、電気自動車に乗った時に感じたことですが、従来のガソリン車と乗り心地が変わらない。それが面白くないと感じながらも、乗り心地がガソリン車と変わらないところまで向上している技術力を感じました。
現在、各自動車メーカーは、近未来のクルマに求める理想形を模索しています。クルマの明治維新じゃないですけど、ヨーロッパがコモンディーゼル車、南米がバイオ燃料車、日本はハイブリッド車を中心に開発が進んでいます。それらのクルマが進化と淘汰を重ねながら、新しいクルマが登場する。要は必要とされる条件によって社会は進化していくと思います。

バイオ燃料は廃食油からも作りだせる

大聖
 クルマは用途により、次の3種類に分けられると考えています。1番目はモノを運ぶこと。2番目は、仕事で使う、つまり移動手段。3番目はプライベートユース。このプライベートユースには、ハイブリッド車、電気自動車、バイオエタノールやバイオディーゼルを使う車など多彩な車種が登場しています。“ファン・トゥ・ドライブ”という意味でも、いろいろなタイプの次世代自動車を運転できますから、楽しいと思いますよ。
 今挙げた次世代自動車のなかでは、電気自動車に注目が集まっていますね。ですが、これは使い方を少々工夫したほうがいいと思います。バッテリーに蓄えられる電気は限られていますから、長距離は走れないというデメリットがあります。しかし、夜間充電すれば昼間の電気消費は抑えられますし、電力の平準化が図られます。しかも電気は太陽光や風力を使った発電割合が増えると、CO2の排出もより少なくなります。環境面と使い勝手を考慮するといいでしょうね。
片山
 バイオ燃料も効果的ですよね。バイオディーゼルは、今は5%しか混ぜてはいけないことになっていますが、バイオディーゼルの大きな特徴は、100%純生でもクルマを動かすことができるんです。実際、僕たちは廃棄油から精製した燃料100%でパリ・ダカール・ラリーを走りました。
大聖
 バイオ燃料のいい点は、廃食油など「もったいないな」というものを上手く使えることです。バイオエタノールも廃棄木材やワラからも作れますから、懸念される食糧の高騰問題も招くことはありません。しかも、従来の燃料と混ぜても使えます。バイオディーゼル燃料の生産量を考えると、混ぜて使うのがいちばん賢いし、ガソリンスタンドでもトラブルが少ない。低炭素社会に一足飛びにはいかないので、やっぱりステップ・バイ・ステップです。

クルマと人間が進化しなくてはいけない

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片山
 化石燃料がよくないことはもうはっきりしています。その意味でも、クルマとの付き合い方について、所有からシェアする方向性も示されています。ただ、都市部はともかく、インフラが行き届いていない地方部では、電気バスなどの公共交通機関の必要性があります。それに、電気自動車に先進のカーナビを搭載して、遊園地のライドみたいに無人で送り迎えしてもらう、なんて方法も考えられますよね。
大聖
 カーナビといえば、今でも燃費向上に有効なんですよ。以前、横浜から東京まで、普通のカーナビ搭載車と、渋滞を回避するルートを指示してくれる最新型のカーナビ搭載車で走行比較をしたら、最新型のカーナビ搭載車の方が30分くらい早かった。燃費も2割程度、最新型カーナビを搭載したクルマの方がいい。それともう一つ、安全運転をするとエコになるんですね。これからのクルマは、安全とエコ、両方の効果を狙ったほうがいいと思います。
片山
 エコドライブといえば、よくどうやって運転すればいいのかを聞かれるんですけど、「病気の家族を病院に連れていくときのように運転すればいい」って説明するんです。そういう時って、急なことはしませんよね。そういった運転をすることが、エコにつながるんです。
大聖
 たしかに、クルマの進化も必要だけど、人間も進化する必要がある。『クールアース50』は平成19年に安倍首相(当時)が提唱したことですが、地球全体のCO2の量を2050年に50%減らす、という構想です。私自身は、日本は80%くらい減らせるのでは、と思っています。それはハイブリッドなどの技術を総動員すると同時に、エコドライブも心がけたい。そしてさらに、最終兵器として“軽量化”が有効だと考えています。クルマが走るためのエネルギーに対して、主に3つの“抵抗”があります。一つはタイヤで、全抵抗の4分の1を占めています。そしてもう一つが空気抵抗で、これが4分の1。残りの2分の1はクルマの重量。つまり、軽量化することで抵抗が減り燃費向上が図られ、そのままCO2削減につながるというわけですね。
片山
 軽量化は大切ですね。普段使わないゴルフバッグとか、余計なものを積んでいるのもエネルギーの無駄遣いです。ですが、エコのためといってもダメで、「熱でカーボンシャフトが痛む心配もあります」というと、お財布を意識するからかすぐ行動を起こしてくれるんですよね(笑)。
大聖
 「エコ」という言葉は、オイコスというギリシャの言葉が語源で、元々は「住む家、集落」という意味なんです。その派生形として生態学という意味の「エコロジー」が生まれ、さらに環境に優しいという意味のエコロジカルになるわけです。そしてもう一つ、「住む」ためには、家庭の経済がしっかりしていないといけない。それでエコノミーという言葉ができたのです。だから「エコ」という言葉は「エコロジー」と「エコノミー」につながっているんです。
片山
 なるほど、わかりやすいですね(笑)。
大聖
 カーボンオフセットやエコ・アクション・ポイントがありますが、自分でこうしたら1,000円削減、といった具合に、数字として理解できると、エコノミーでエコになる。
片山
 いいですね。エコノミーがエコにつながることを数値化して連動させたら、多くの人からより理解してもらいやすくなります。
大聖
 ただ「あーしろ、こうしろ」と、制限だらけになるのもよくない。極端にやりすぎて、くれぐれも「エコ」じゃなくて「エゴ」にならないように気をつけないとね(笑)。

Profile


  • 片山右京(かたやま うきょう)
    1963年、東京都生まれ。1983年にFJ1600デビュー後、全日本F3000、ル・マン24時間レースを経て、1997年までF1に参戦。1999 年にはル・マン24時間レースで総合2位に、2002年からはパリ・ダカにも出場するなど、日本のモータースポーツ界を牽引してきた。一方で、2002年にエベレストに挑戦するなど登山家としても積極活動。チーム・マイナス6%会員であり、環境省の次世代自動車等導入促進事業アドバイザーも務める。

  • 大聖泰弘(だいしょう やすひろ)
    早稲田大学理工学部教授(総合機械工学科)。専門・研究分野は機械工学、エンジン工学、自動車工学、環境・エネルギー工学。自動車の環境・エネルギー問題とモビリティに関する研究を行っている。環境省中央環境審議会専門委員、国土交通省交通政策審議会委員、経済産業省総合資源エネルギー調査会委員、財団法人日本自動車研究所理事など、自動車の環境・エネルギーに関連する委員会の委員などを務める。