

独立行政法人国立環境研究所 特別客員研究員
西岡 秀三

- 会 場:ニッショーホール
- ■基調講演・コーディネーター
西岡 秀三 独立行政法人国立環境研究所 特別客員研究員 - ■パネリスト
枝廣 淳子 ジャパン・フォー・サステナビリティ代表
神保 重紀 日経BP 環境局プロデューサー 兼 日経BPクリーンテック研究所 研究員
冨田 勝己 パナソニック株式会社 環境本部
関森 雅之 横浜市 地球温暖化対策事業本部担当 課長 - ■当日のプログラム
| 13:30-14:00 | 開場(先進事例ムービー上映) |
| 14:00-14:08 | 開会のあいさつ(環境省 地球環境局長 鈴木正規) |
| 14:08-14:55 | 基調講演 |
| 14:55-15:05 | 休憩 |
| 15:05-16:30 | パネルディスカッション |
日本こそが低炭素社会のモデルを世界に先駆けて示すべきだ
西岡でございます。今日は、中長期ロードマップの報告をさせていただきます。ロードマップと言いますから地図でございまして、いわゆる私たちが低炭素社会に向けて旅立つための地図でございます。東京から京都へ行くみたいなもので、道筋にどんなことがあるか、箱根の山を越えなくてはいけないし、大井川も大変だなあと、だけど景色の綺麗なところもあれば、うまい団子の食えるところもあるだろうと、そういう話でございます...全文表示
基調講演を動画で見る
西岡 秀三氏
中央環境審議会 地球環境部会 中長期ロードマップ小委員会・委員長。独立行政法人国立環境研究所・特別客員研究員。1988年よりIPCCなどで、気候変化影響や対策シナリオ研究に従事。
西岡 それではパネルディスカッションを私の司会でやらせていただきます。今日のテーマは、
低炭素社会に向けたロードマップでございますが、地域の取組に学ぶというサブタイトルがあります。地域というのは、市町村だけでなく、まず人がいて、その人の動き、企業の動き等々を伝えるメディアもいますし、そのまとまりの中に世界を作っているビジネス、私がステークホルダー(stakeholder)と呼んでいるこの低炭素社会に関係する全ての人々を意味します。今日は、このステーク(stake)=役目、場面、任務の中でトップをいっておられるこの4人の方々に、「こういう風に世の中が動いている」という話を是非お伺いしたく思います。私も世界中の研究者を集めた会合を開いておりますが、そういう中でも新しい社会の構築に向けて多くの力が注ぎ込まれています。みなさまにもそれに向かって参加していただきたく、そのために、このパネルディスカッションはみなさまの参考になると思っております。全体の流れは、❶それぞれ4人の方のお話し ❷私の方で用意をした質問 ❸みなさまのアンケートと会場からの意見を含めたディスカッション ❹まとめ と考えております。まず、事例報告、ロードマップに対する所感をパネリストの方々にお話しを伺いたく思います。
家まるごと、街まるごとで低炭素を実現する商品を展開
冨田 パナソニック環境本部の冨田でございます。西岡さんの話にあった削減の最もポテンシャルの高い分野として「家庭」「情報分野」というお話しがありました。その部分の企業の取組の紹介をいたします...全文表示
冨田 勝己氏
パナソニック株式会社 環境本部環境企画グループ コミュニケーションチーム チームリーダー。R&D部門、企画部門を経て、2005 年から環境本部に在籍、環境コミュニケーションを担当。
西岡 企業が明快な意思をもって環境にのりだしている、エンカレッジングなお話しだったと思います。一つだけ気づいたのは、「丸ごと」というのは昔はシステムといっていましたけれど、相当、相乗的なメリットもでてくると思います。自治体との話では、そういういろいろなステークホルダーと共同でやっていく、まさにそういう方向に進んでいっているということに感銘を受けました。
市民と企業と力を合わせて環境最先端都市を目指す
関森 横浜市役所の関森でございます。横浜市のCO2排出状況は、エネルギー転換、産業、家庭、業務、運輸、きれいに5等分しております。ある意味混在化した都市となっております。その中で、自治会の加入率80%の市民のお力の中で、ごみを減らしたり、風力発電施設を設置したりとかいろいろな取組を進めています...全文表示
関森 雅之氏
横浜市地球温暖化対策事業本部 担当課長。1988年、横浜市入。2007年4月、都市経営局大学調整課長。2009年4月より現職。
西岡 横浜市は市民の組織力が非常にあるということでしたが、地域の力をどうやって掘り起こすか、企業、大学、市民、需要も供給もあると、それをどう繋いでいくか、市の方でもリーダーシップをとっているというお話でした。
世界のスマートシティ構想は日本企業のビジネスチャンスになる
神保 日経BPの神保でございます。横浜市さんのお話しを受けて、世界で進んでいるスマートシティとかエコシティというプロジェクトの概要について紹介いたします。日本語で訳すと次世代型の都市とか環境配慮型の都市とか言われますが、世界各国でいろいろなプロジェクト...全文表示
神保 重紀氏
日経BP環境局プロデューサー 兼 日経BPクリーンテック研究所研究員。2004年1月、環境技術&経営をテーマとする「日経エコロジー」編集長に就任。
西岡 世界の各地で都市づくりという形で低炭素社会を迎えつつあるというお話しでした。
人を動かすには啓発だけではなく動きたくなる仕組みづくりが大事
枝廣 枝廣でございます。神保さんがスマートシティのお話をしてくださいましたが、これからは日本でも世界でも進んでいくと思います。スマートシティというと、技術やハードが前面に出ています。しかし、スマートシティがスマートシティとして機能するためにはソフト面での人の役割...全文表示
枝廣 淳子氏
ジャパン・フォー・サステナビリティ代表。2つの会社と環境NGOを運営しながら、講演、執筆、翻訳、コンサルティング等の活動を展開。主な訳書に、アル・ゴア氏著「不都合な真実」など。
西岡 市民の力をどう引き出すか、その意識ばかり、ロードマップばかり書いても全然前に進まない。そのギャップをどう埋めていくか。そして、コベネフィットという、低炭素は一つの手段であってこれは大きな変革のチャンスであり、その先に何があるかということをみんなで考えていかなくてはいかないといったお話しであったと思います。
「会場からの質問・質疑応答」
- Q1 製品のリサイクル・システムに関してと海外展開に関して(冨田氏への質問)
→ 回答
- A1 買い替え、リサイクル、資源の問題はよくご質問をいただきます。商品を賢く買い替えていただくとCO2は削減できるけれど、資源はどうなるかということだと思います。
CO2削減だけでなく、資源循環というところも2010年以降大きな取組のポイントであり出来るだけ循環型の資源を使って、廃棄物の排出量を徹底的に削減しようとしています。
今後は、弊社のルートだけでなくて大きく社会の中でも還元されてくるような再生資源というものを使った商品を多く出していこうと思っています。
海外の展開は、新興国での生活向上に合わせて家電も必要となり、日本で培ってきた技術を活かすことができると考えている。現場、現地での生活の状況をマーケティングしてそれに合わせた商品をお届けする必要があります。一例を申しますとインドネシアでは、電力事情がよくなく一家庭当たり、700W の使用でブレーカーが落ちる地域もあります。その中ではよりエコということだけでなく、生活するというベースの上での省エネが重要になります。エアコン、冷蔵庫、洗濯機を同時に動かしても600W 以下の消費電力となるような商品シリーズを市場に提供してご好評を得ております。こういった新興国の生活事情に合わせた環境につながるような商品開発とご提供を進めるのが新興国への貢献のあり方であると思っております。(隠す)
- Q2 先の世界、横浜市のイメージをどう考えてるか? どういうことをイメージしながら低炭素社会を入れ込もうとしているか?(関森氏への質問)
→ 回答
- A2 私どもの夢に描いている「のぞましい世界」は、つながりのある街です。横浜市のロゴ「OPEN YOKOHAMA」にあるように、横浜は非常にウェルカムな文化で、国内だけでなく海外からも横浜の地で勉強にいらっしゃる方がおり、そしてまた国内外に飛び立っていく街にしたいと思います。その為には、いろいろ多様化している市民、それぞれの活動時間は違いますので、エネルギーの相互融通、エネルギーコミュニティの社会インフラが大切であります。低炭素化、スマートシティプロジェクトは持続可能な社会のための手段として取り組んでいきたいと思います。(隠す)
- Q3 供給側の低炭素化はもっと法制度の整備によって推進してはどうか?なぜ、日本ではうまくいってないのか?
日本全体として都市という良いまとまりで、海外進出をしてどういう形で企業が入っていき世界に貢献するのか?(神保氏への質問)→ 回答
- A3 エネルギー供給側に課税して規制すればいいというのは確かにそうだと思いますが、環境省さんがすでにやってるはずで、それが出来てないということにはいろいろな理由があるのではないかと思います。例えば、中国ではSOx、NOxという有害物質に直接課税をかけて規制をしてまして、今年からは炭素税もかけます。一方で、中国では化石燃料にも高い資源税をかけていて、税制でCO2排出量を減らそうとしています。日本でもそういうやり方もあるかと思いますが、枝廣さんのご指摘にあったように、市民が選ぶときに、通常の電気じゃなくて、再生可能の電気を選びたくなるような政策誘導、いろんなグリッドをどうするかといろいろな問題があると思いますが、結局ユーザー側が変わらない限り、供給側だけに規制をかけても、難しいと思います。例えば、供給側に電気で規制をかければ、原発の原子力の稼働率をもっと高めなくてはいけないとかそういう議論になっていきますので、どちらかというと需要者側がいろいろと選択肢を広げられるような政策が大事になってくると思います。
都市を日本から輸出する、インフラ輸出とかパッケージ型輸出とか、いわれていますが、非常に大事だと思います。日本は企業が単体で都市づくりをしたケースは多くはありません。今度パナソニックさんが藤沢市で意欲的な取組をされますけれど、そういうのは輸出されるべきだと思います。ある程度いろいろな業種の企業がチームを組んでやってくべきで、いろいろな業種があるのでビジョンをはっきりさせることが必要になると思います。中国で日立製作所さんがいろいろと参入していますけれど、シンガポールの企業と共同でやっていくのも一つの手であると思います。シンガポール企業は、街づくり、都市国家そのものであり、都市づくりのノウハウがあり、工業団地の造成を東南アジアで行っていて、インドなどでも行っていて、地元住民との交渉の上でも経験豊富な海外企業と組むというのも一つの手だと思います。(隠す)
- Q4 持ち家じゃない人はどうすればよいのか?(枝廣氏への質問)
→ 回答
- A4 「持ち家じゃない人はどうすればよいのか?」 これから制度を作っていくときにはそういう声が出てくることが想定されています。例えば、固定価格買取制度について太陽光発電に限って話をしていると、「うちは賃貸で家計も苦しいのに、なぜうちの電気代が上がってお金持ちの一軒家に補助がまわるんだ」という意見が出ます。大きな目標にみんなで進むときに、持ち家かどうかということで争いが起こってしまうのは、政府に責任があると思っています。そうならない制度を作るのは一つの大事なポイントだと思いますが、例えば、電力、エネルギーについていうと、持ち家や一軒家でなくても可能なベランダ発電や、SOLAMO(ソラモ)というベランダにつけられる太陽熱の給湯器があります。賃貸で機器をつけるのは厳しい場合、例えば、出資を通して参加する方法もあります。長野県の飯田市で「おひさま進歩エネルギー」という会社があり出資者からのお金で太陽光発電をしていますが、出資者の多くが「うちにはつけられないけれど資本参加をする」といっていますので、こういうオプションもあります。固定価格買取制度によって賃貸の人が損をして、一軒家の補助をしているのだと思うのは、コミュニケーション不足による誤解であり、もう少し大きな時間軸と視野で考えてもらえるように、丁寧に説明する必要があります。化石エネルギーの輸入に頼る日本では、コストとリスクを考えた場合、国のエネルギー自給率をあげて、自然エネルギーを増やす必要があるという説明を丁寧にしなくてはなりません。それから、大きなスマートグリッドに進んでいくまえに、例えば「みそをつくるのが得意だからそれを隣にあげる。隣の太陽光の電気を代わりに貰う」というような「みそ しょうゆ、電気」の貸し借りが出来るような、もう少し柔らかい制度がつくれると良いと思います。今は法律があって出来ませんが、自分の近所で電力のやりとりをしたり、みんながそれぞれの持ち分で協力しながら、持ち家か否かで争うのではなく、人々の繋がりとか街の賑わいとか、それぞれの家庭が楽しくて幸せである街づくりにつながる形がつくれると良いなと思います。(隠す)
- Q5 各関係省庁が環境政策にばらばらに論議しているのでは?ロードマップを基本計画に置き換えるとすれば各省庁との整合性が必要であり如何にそれを図っていくのか?(環境省への質問)
→ 回答
- A5 (環境省担当者)これまでは政府としまして、地球温暖化問題に関する閣僚委員会の下で、関係省庁が集まりまして、例えば経済影響に関しましてタスクフォースなどで議論を進めてきました。その一部としまして、どのような技術があるのかにつきまして、中央環境審議会の小委員会で、詳細について議論をつめています。一定のとりまとめをいただきましたので、今後、今年に入りまして施策のステージとしましてどのような施策を使ってこれらの技術を導入するかに移りますので、各省庁の政策ツールを使うために、議論を深めて参り、法律が通りましたら基本計画という政府の一致したものに作り上げたいと考えております。今後さらに関係する省庁との議論を深めるというステージに移っていくところでございます。
(西岡)今の件でございますけれど、いつも縦割りで勝ち抜き戦であるのが問題であります。いずれにしても大切なのは、どこかでまとめて欲しいということで、それぞれの方面でそれぞれの役所でやってきたことも重要であります。私どもは低炭素社会をどう作り出していくかの原案を出していて、国民各層(市、政府、市民であり)がプラットフォームに乗っかっていただけるような一つのものにまとめていただきたいと思います。例えば、イギリスでは気候変動エネルギー省をつくって、フレキシブルにやっています。(隠す)
- Q6 2050年までに、住宅などのゼロエミッション化に関して、FITのような価格的な経済的な支援がないと普及は進まないのでは?財政支援は考えられていてロードマップを作っているのか、技術革新を前提としているのか?(西岡氏への質問)
→ 回答
- A6 (西岡)2030年40年のスパンで考えるべきだと思いますけれども、低炭素化というのはある意味で大変な転換で、これまでエネルギーを使うことで技術を開発していったのを、エネルギーをなるべく減らして開発していこうとしています。技術開発は要ります。都市というまとまりのシステム、グリッドというシステムも必要で、それを動かす技術・制度・慣習といったものを経済的な3つの手段でやっていきます。安定の気候の価値が高くなってきています。気候に価値をつけてみんなで分担する経済的な手段がいい意味で入っています。(隠す)
「まとめ」
- 西岡 最後に総括コメントを御願いします。
- 冨田 企業の立場で言うと、私たちがするべきことはシンプル...続きを読む
- 冨田 企業の立場で言うと、私たちがするべきことはシンプルです。徹底的に省エネな商品を開発し、徹底的に省エネを進めた製造プロセスで商品を生産し、それらをお届けすること。次のポイントは、これらの省エネ商品を、いかにしてお客様にご使用いただくかということ。マーケティングなどの工夫により、パナソニックを選べば、エコについては大丈夫と認識いただけるような商品を作っていきたいと思います。(元に戻す)
- 関森 横浜市の考え方でいうと市民力であり...続きを読む
- 関森 横浜市の考え方でいうと市民力であり、企業を含めた市民のみなさまが、具体的な製品、設備の理解をし、使ってもらうことに私たち行政は汗をかいています。「みなさまの力とエンドユーザーである市民の力」の連携で初めてアクションとなります。そのことが低炭素にもつながるものであり、私たち自治体の基本の仕事であります。(元に戻す)
- 神保 地球温暖化防止はネガティヴにとられがちであるが、チャンス...続きを読む
- 神保 地球温暖化防止はネガティヴにとられがちであるが、チャンスもリスクもあると見るべきと思います。今までの業種が変わってきて、EVが出てくれば、モーター、電池などの大きいコンポーネントとなりニーズを捕まえるチャンスのポイントになると思います。(元に戻す)
- 枝廣 技術や制度を変えるという話はたくさんでていて...続きを読む
- 枝廣 技術や制度を変えるという話はたくさんでていて、それらは変化があったときにわかります。「価値観を変えるってどういうことなんだろう?」とずっと考えているのですが、その鍵は「時間軸」かなあと思っています。アメリカのネイティブのイロコイ族には「何をするにも常に7世代先のことを考え行動せよ」という掟があるそうです。私たちに必要な価値観は時間軸を伸ばすことだと思います。例えば、会議などで発言する際のルールとして、どのくらい先のことを考えているかを宣言するのもいいと思います。若い人たちの声を反映するのも大事なポイントです。企業よりも長い時間軸で考えているNGOの人たちの意見を聞いていくのも大切と思います。(元に戻す)
- 西岡 LCS-R netという政策担当者と研究者の会合が...続きを読む
- 西岡 LCS-R netという政策担当者と研究者の会合があります。そこでは如何に実行していくか、都市という単位でシステムを変えていくことが重要ということが議論されています。従来の行政が言って動くというトップダウンでは物事は進まず、多様な主体が一斉に動き出す必要があります。それぞれが行動し、動き出して欲しいと思います。(元に戻す)